ソングコンテストグランプリ・2018
日本作曲家協会・日本作詩家協会 共同企画作曲部門
グランプリ曲決定!
今年度の「ソングコンテストグランプリ・2018」は、当協会創立60周年を記念して作詩部門・作曲部門とも広く全国に作品を募集した。川中美幸さんを対象歌手として、1月15日から詩の募集を開始したところ全国から2,200作品を超える応募がありました。
そして3月30日・4月2日の2日間、日本作詩家協会・日本作曲家協会合同のソングコンテスト委員会とテイチクエンタテインメント(株)の小松ディレクターによる選考の結果、「半分のれん」(作詩・岸かいせい)、「ちゃんちき小町」(作詩・ゆうじ誠)の2作品が最優秀作詩賞に決定しました。
この2編の詩を課題詩として4月15日から当協会会員のみならず広く一般からも作曲募集を行いました。
「半分のれん」会員・142作品、一般・123作品。「ちゃんちき小町」会員・111作品、一般・69作品、合計445作品の応募がありました。
6月25・26日の両日、当協会会議室において、笹森文彦(日刊スポーツ)、清水 満(産経新聞)、田家秀樹(音楽評論家)の3氏に審査員を依頼。「半分のれん」会員23作品、一般14作品。「ちゃんちき小町」会員15作品、一般7作品を選び、最終選考はテイチクエンタテインメント・小松ディレクターと制作スタッフにより行われました。
その結果、最優秀作曲賞には「半分のれん」が左峰捨比古氏に、「ちゃんちき小町」が石田光輝氏に決定しました。
そして、テイチクエンタテインメントにおける編成会議の結果、「半分のれん」がメイン曲に決定しグランプリに選ばれました。なお左峰氏は一般からの応募で、ソングコンテストグランプリにおいて一般からの応募作品がグランプリを獲得するのは初めてのことです。
作曲部門 グランプリ
左峰 捨比古(一般)
課題詩「半分のれん」
作詩:岸 かいせい(ソングコンテストグランプリ・2018最優秀作詩賞)
最優秀作曲賞
石田 光輝(協会員)
課題詩「ちゃんちき小町」
作詩:ゆうじ 誠(ソングコンテストグランプリ・2018最優秀作詩賞)
優秀作曲賞
課題詩「半分のれん」
川音 稔、藤田 たかし、山口 正光(協会員)
江口 一人(一般からの応募)
課題詩「ちゃんちき小町」
片平 いさみ、宮城 八郎、山口 正光(協会員)
左峰 捨比古(一般からの応募)
受賞に寄せて
「半分のれん」作曲:左峰 捨比古
ソングコンテストグランプリ・2018、「半分のれん」で最優秀作曲賞を頂き、誠に有り難うございました。近年、一般からの応募も出来るようになり、今回一念発起して、応募させて頂きました。
「半分のれん」、居酒屋のおかみの、ふとした心の揺らぎを書いた歌詩に、力を抜いて心を寄り添わせてメロディーを書きました。高評価をいただき、心より感謝申し上げます。
協会から受賞のお電話を頂いた時は、ほんとにビックリ致しました! 10分位しばし呆然! その後、妻に報告。彼女曰く「ホントに遅咲きだったね...嬉しかったでしょ...」泣いていました。自分は遅れてきた新人です、よろしくご指導ください。
「ちゃんちき小町」作曲:石田 光輝
この度は、最優秀作曲賞の受賞、誠にありがとうございます。
大好きな川中美幸さんの歌、そして「ちゃんちき小町」というユニークな詩に、これこそ自分の書きたい世界と、夢中で書き上げ、すぐ応募しました。
8年前、還暦を迎えると同時に膀胱がんの宣告を受け、10回の内視鏡手術と化学療法を繰り返し、最後に膀胱全摘出、人工膀胱設置手術、抗がん剤治療と、苦しい闘病生活の中でも、歌うことと作曲の意欲を捨てずに頑張ってきてよかったと、心から感謝しております。今では元気に毎月のライブで30曲演奏して歌えるほど回復しています。
生まれ育った地元、そして私をいつも見守ってくれる地域の人たちと共に歩いてきた音楽人生に、またまた後押ししてくださったこの大きな賞に、心から感謝し、これからも邁進してまいります。本当にありがとうございました。
ソングコンテスト選考にあたって
テイチクエンタテインメント(株)ディレクター 小松 永枝
期待と不安がいり交じりながら作品を心待ちにしていた。
しあわせ演歌のイメージが強い川中美幸だが、作詩はそれにこだわらないでとリクエストを。そっと人に寄り添えるような詩ができたらいいなと、川中美幸が歌っている姿が浮かんできた二作品を。
作曲は、詩がよく聞こえてくるようなメロディーで、歌いどころ、聞かせどころがある歌を。作曲家協会会議室に審査員のお歴々が、大量の応募作品を真剣に丁寧に聞いて選考をしておられる姿を拝見して、身が引き締まる思いがした。
半分のれんは、少々フォークタッチの演歌だが、女のいじらしさ、可愛さが優しく動く旋律でより主人公が浮き彫りになったのが決め手。
ちゃんちき小町は、粋なお江戸の情景が小気味良くメロディーに表れていた。どちらもデモテープが聞きやすく歌も譜面もまとまっていた。
今回、このような機会をいただき、私自身の勉強にもなり、ヒット曲を作りたいという気持ちが新たに沸き上がりました。作曲家協会、作詩家協会の皆様に心より感謝を申し上げます。
選考にあたって寸評
日刊スポーツ新聞社 笹森 文彦
対象歌手の川中美幸といえば、私は幸せ演歌がすぐに浮かぶ。それと長く声を響かせる独特のロングトーン。それを意識しながら「半分のれん」は審査した。
もちろん幸せ演歌である必要はないし、独自の感性が大切である。とはいえ「これは川中じゃないな」という作品も多かった。詩が演歌系にしては長めという点でも苦労されたと思う。
「ちゃんちき小町」は、タイトルからどうしても「チャンチキおけさ」(三波春夫)が浮かぶ。審査でその先入観を払拭するのが大変だったが、軽快で楽しいメロディーが数多くあった。おたまじゃくしの配列は宇宙のように無限なんだな、とあらためて痛感した。
産経新聞特別記者 清水 満
ひとつの詩に無数の音が乗っていた。いつもながら作曲家たちの"無限の可能性"に感心させられた。とはいえ、歌は詩と音のコラボ。いくら素晴らしいメロディーでも、詩とマッチしなければ魅力は半減する。審査にあたり、自分なりに詩を解釈して臨んでみた。
「半分のれん」は、お客に淡い恋心を抱く女将の話。揺れ動く女心の機微、心情が切なく描かれている。目を閉じて音を聴く。まるで映画を見ているかのように情景が浮かぶ。そんな作品を優先して選んだ。
「ちゃんちき小町」はカネなどを打ち鳴らす"ちゃんちき"が理解されていない作品が多かった。最後に両作品とも沢山の"いい音"があったのに、詩とのズレを感じた。それが残念だった。
音楽評論家 田家 秀樹
和風情緒というのは"機微"と"粋"に集約されると思います。口に出せない女心のいじらしさと心の揺れを振り切ったようなきりっとした気風。今回の2曲はそれぞれに見事にあてはまる気がしました。
中でも「半分のれん」は力作です。のれんだけではなくきんぴらごぼうや店の灯り、商い札などに託して気持ちを伝えるという日本語詩の真骨頂。巧みです。
そして対照的にいなせで明るい「ちゃんちき小町」。鼻歌のようなさりげなさの中に切なさを忍ばせた作品や三波春夫さんのような陽気さを備えた作品などは、それぞれの特徴を的確に捉えているのではないでしょうか。
今回も言葉とメロディーの奥深い関係を感じられる時間が過ごせたことを感謝します。